極上男子短編集
「だから、謝ろうと思って」


予想外の言葉に私は目を丸くして2人を見つめた。


「謝るって?」


「昨日のこと。私達勘違いしてたんだよね。勝川くんが、あんたのこと好きなんだって。でも、そんなことありえないもんね」


そう言い舐め回すように私を見つめてニヤニヤとした笑みを浮かべる。


人を見下すような笑みに心の中に澱が溜まっていくのを感じて私はうつむいた。


「ごめんね昨日は」


謝られたって全然うれしくない。


それでも無視するわけにはいかなくて「いいよ」とだけ答えた。


私達の横では洗濯機がゴゥンゴゥンと低い音を立てて動いている。


もう10年は使っている洗濯機で、そろそろ音や動きが怪しくなってきている。


顧問に買い替え時かもしれないと伝えないといけない。


そんなことを考えたとき、裕太からしても私は古い人なのかもしれないと、ふと思った。


ずっと一緒にいてたいていなんでも知っているから一緒にいれば楽でいい。


だけど、同じ人とずーっと一緒にいると飽きてしまう。


裕太は新しい誰かと仲良くしたいんじゃないだろうか。
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