極上男子短編集
不意に裕太が顔を近づけてきたかと思うと、頬にかすかな衝撃があった。


チュッと音がしてすぐに離れていく。


裕太は暗がりでもわかるほどに顔を赤く染めて、「じゃあな!」と右手を挙げると、隣の自分の家に入っていったのだった。


裕太がいなくなってからも私はしばらくその場から動くことができなかった。


裕太にキスされた右頬に触れて、キスされたのだと理解する。


これくらいのキスだって、子供の頃には何度もやってきた。


そのらい私達は仲良しだったのだ。


だけど今回は違う。


子供の頃とは全然違う意味のあるキスだ。


「きゃあ!」


実感が湧いてくると同時に小さく悲鳴を上げて、私は自分の家へと逃げ込んだのだった。
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