極上男子短編集
裕太は一足先に教室へ向かってしまったから、そのタイミングで声をかけてきたに違いない。


ずっと見られていたのかと思うと少しだけ気分が悪くて顔をしかめた。


「なんで一緒に登校してきてんの?」


その口調は厳しく、目はつり上がっている。


私へ剥けられたあからさまな敵意にひるんでしまいそうになる。


狭い倉庫に閉じ込められたときの恐怖心も蘇ってくる。


だけど私はまっすぐに2人を見返した。


私はもう裕太と離れる気はないし、2人のイヤガラセに屈するつもりもない。


その強い気持ちが通じたのか、2人のほうが少したじろいで後ずさりをした。


「人を陥れようとするんじゃなくて、自分が努力することに時間を使ってみろよ」


そんな声が聞こえてきて私の肩に手が回された。


顔をみなくてもすぐに裕太だと気がついた。


顔がカッと熱くなるのを感じる。
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