極上男子短編集
そう思うととたんに自分だけがこの空間かあらはじき出されたような感覚に陥った。


みんなの笑い声や真剣な表情がどこか遠くの世界のもののように感じられる。


そうだよ。


なんで私、こんなところにいるんだろう。


こんな風に真面目に参加することなんてないのに。


ふっと心が軽くなる感覚がして、私は体の向きを変えていた。


そのまま躊躇することなく出口へと向かう。


私ひとりがいなくなったってきっと誰も気が付かない。


参加者の中で一番地味で目立たなくて、誰にも期待なんてされていないんだから。


体育館から出た瞬間大きく息を吸い込んだ。


気持ちがいい空気が胸一杯に広がっていく感覚だ。


このまま教室へ戻ってしまおう。


そう思って廊下を歩いていると「どこに行くんだよ?」と、後ろから声をかけられた。
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