極上男子短編集
五十嵐浩介はそのままずんずん歩き出す。


私はこけそうになるのをなんとか耐えて、慌てて五十嵐浩介の後を追いかけた。


「ちょ、ちょっと、どこに行くの!?」


後ろから声をかけても返事はない。


五十嵐浩介は無言で廊下を歩いて、空き教室の前で立ち止まった。


躊躇なくドアを開けて教室内に踏み込む。


こんな場所に一体なんの用事が?


そう思ったとき、教室内の光景が目に飛び込んできた。


ただの空き教室だと思っていたそこには大きな姿見があり、その前には机が6つ並べられていた。


机の上には色とりどりの絵の具やパレットをを連想させる、化粧道具がズラリと並ぶ。


更には姿見があるにも関わらず手鏡が5つも用意されていた。


「ここは俺の特別な部室」


「部室?」


教室内の光景にいまだ呆然としながらも聞き返す。


五十嵐浩介はうなづき、私を机の前の椅子に座らせた。
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