極上男子短編集
だからといって高校生活のすべてが灰色だったわけじゃない。


有紗や他の中のいい友達はできたし、遊びにもでかけたし、修学旅行では思い出も作った。


私としてはそれで十分だと思えた。


「次の文化祭だって小道具係に自分から挙手しちゃって。もう少しなにかあったんじゃないの?」


今のは小道具係が悪いというように捉えられる。


私はさすがにムッとして「それもそれで楽しいってば」と、キツイ口調で言い返した。


元々手先が器用な私は小道具や衣装作りに向いている。


ちなみに私の在籍している3年C組はステージ上で手品をすることに決まっていた。


「手品してみればよかったのに」


有紗に言われてまた返事に詰まってしまった。


手先が器用な私は実は少しだけ手品をしたことがあった。


お店で買った手品道具を使って、簡単なヤツを有紗に披露したこともある。


我ながらうまくできたと思っていたが、有紗は想像以上に喜んでくれたのだ。


「手品はただの趣味だから」


本当は文化祭で手品をすると決まったとき心臓が大きくはねた。


嬉しくて、ステージ上でやってみたいと思った。


みんなに見てもらいたかった。
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