極上男子短編集
五十嵐浩介も言っていた通り、努力するかしないかでは大きな差が生まれてくるんだろう。


「メークしないの?」


飯田さんに聞かれて『私はメーク道具を持っていないから』と、返事をしようとした。


が、その前にテントの外から声をかけられた。


「佐藤沙織、いるか?」


ぶっきらぼうな男性の声。


でもどこかで聞いたことのある声だ。


美穂と有子もチラリと入り口の方へ視線を向けたけれど、自分たちの準備で忙しくてすぐに鏡へと視線を戻した。


「はい」


誰の声だっけ?


疑問を感じながらテントから出ると、目の前に五十嵐浩介が立っていた。


突然の出現に悲鳴を上げてしまいそうになり、慌てて両手で自分の口を閉じた。


五十嵐浩介はすでに白いタキシード姿に着替えていて、髪の毛はオールバックになっている。


いつもと違う雰囲気に心臓がバクバクと音を立て始めた。


どんな姿でも似合ってしまうのが憎らしい。
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