極上男子短編集
「な、なにか用事?」


ドキドキを押し隠して質問するが、声が少し震えてしまった。


五十嵐浩介はそんなことには気がつくこともなく、私の右手首をいきなり掴んで歩き出した。


ずんずん先へ進む五十嵐浩介に私は必死でついていく。


「ちょっと、どこへ行くの!?」


前にもこんなことがあったと思い、五十嵐浩介は以外と強引な性格をしているのだと理解した。


普段は友達と明るく会話し、協調性があるように見えるけれど。


「メークをする」


五十嵐浩介は空き教室の前で立ち止まって言った。


私は早足でここまで来たから息が切れて返事ができない。


「座って」


椅子に促されて私は言われるがままにそこに座った。


すぐさま五十嵐浩介が作業に取り掛かる。


無駄のない動きに見惚れてしまいそうになってハッと我に返った。
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