極上男子短編集
☆☆☆

「よし、できた!」


20分ほどでメークは終わった。


私をトップにすると言いながらも終わるのが早くて拍子抜けしてしまう。


きっと五十嵐浩介もメークの途中で諦めたのだろう。


私ではトップを取ることはできないと。


それならそれでいいのだけれど、なんだか胸の中にしこりのようなものが残ってしまう。


「衣装は暖色系を選ぶと良い。明るい色が似合う肌をしてるから」


「……わかった」


メーク道具を片付ける五十嵐浩介に、すでに反論する元気は残っていなかった。


そもそもドレスだって自分ではなにを着ればいいのかわからない状態だったから、助言してくれて助かった。


「ありがとうね」


私はこころのこもっていない声でそう言い、出口へと向かう。


教室から出ようとしたとき「お前なら、必ずトップに立てる」と言われて振り向いた。


まだそんなこと言ってる。


呆れてしまいそうになりながらも、苦笑いを浮かべて頷いたのだった。
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