極上男子短編集
恥ずかしくてカッと顔が熱くなるのを感じる。


ダメだ。


やっぱり私なんてダメなんだ。


落ち込み、マイクを持つ手から力が抜けていく。


もうこのまま逃げ出してしまいたい。


こんなドレス、今すぐに脱ぎ捨ててしまいたい。


そう思ったときだった。


視界の端に動く人影が見えて少しだけ顔をあげた。


ステージの端に立っていたのは五十嵐浩介だ。


五十嵐浩介は鋭い視線をこちらへむけて腕組みをしている。


せっかくメークをしたのに台無しにしてしまって、怒っているのかもしれない。


自己紹介くらいしっかりやれ。


そう言われているような気がして、更に萎縮してしまう。


もうこのままステージを降りてしまおう。


でも、マイクを持ったままじゃダメだ。
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