極上男子短編集
同時に髪の毛が頬にベッタリと張り付いた感触があり、冷たさが体を包み込む。


水をかけられたのだ。


そう理解するのに少しだけ時間がかかった。


理解したあと頭上を確認すると、そこには紐がつながった青いバケツがあり、今はひっくり返っている。


「す、ストップストップ!」


予想外の出来事だったのか、文化祭実行委員会が慌て始める。


バスタオルを持って駆けつける人、ステージの天井に設置されていたバケツに気が付いて騒ぎ出す人。


会場内はまたも騒然となってしまった。


私はなにもできず、ずぶ濡れになった状態でただ立ち尽くす。


せっかくのドレスは濡れボソリ、ポタポタと水滴が足元に広がっていく。


やっぱり、私なんかがこんなコンテストに参加したからだ……。


両手で拳をつくって下唇を噛みしめる。


悔しさと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
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