極上男子短編集
五十嵐浩介が逃げていく有子を呆れた顔で見送り、呟いた。


美穂がステージ中央に立っているときは有子がロープを持っていたのだろう。


2人で考えたことに間違いなさそうだ。


とんでもないことになってしまったプリンセス決めは途中で中止になるかと思われたが、有子と美穂の2人が失格となった後も続行されることになった。


と言っても私はずぶ濡れの状態で、とてもこれ以上続けることはできない。


自然と飯田さんへと視線が集まった。


「でも、私……」


飯田さんは突然自分だけが残ったことに戸惑っていたけれど、私は力一杯拍手を送った。


この4人の中では飯田さんが一番プリンセスにふさわしいと私も思う。


そして、その隣に立つのは……。


タキシード姿でステージ上に立った五十嵐浩介を見て胸がチクリと傷んだ。


2人並んで立つと本当にお似合いだと心から思う。


大きな拍手に包まれた飯田さんは顔を赤らめて微笑んでいる。


嬉しいはずなのに私の胸はなぜか少しだけ傷んでいた。


地味で目立たない私が写真投票で4位以内に選ばれた。


あの時からどこかで期待していた部分があるのかもしれない。
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