極上男子短編集
もしかしたら私も輝くことができるんじゃないかと……。


そんな夢も今日で終わり。


また明日から元の日常に戻るんだ。


いつもどおり、なにも変わらない日常に。


なのにどうしてだろう。


胸の奥が痛くて仕方ない。


こんなに素敵な夢を見せてもらったのに、どうして嬉しくないんだろう……。


有子と美穂にイジラれても、ステージ上で転倒てしても涙はでなかった。


グッと我慢することができていた。


それなのに、今になって目の奥から溢れ出した涙が止まらない。


ステージ上に立つ2人を祝福したいのに、涙で滲んでできなくなった。


ボロボロと頬をこぼれていく涙。


全身びしょ濡れだから私の涙には誰も気が付かない。


それでいいんだ。


誰にも気が付かれないように泣いて、明日にはいつもどおりの日常が始まる。


それでいい。


それなのに……。


ステージ上の五十嵐浩介と目があった。
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