極上男子短編集
3年生になった今は入学当初よりも身長が伸びたようで、更にかっこよさに拍車をかけている。


今年卒業ということでどのくらいの女子たちが彼に告白するのか、検討もつかない。


卒業式当日は大変なことになりそうだという予感があった。


「沙織、顔が赤いけどどうしたの?」


有紗に指摘されて咄嗟に両手で頬を包み込んだ。


少しだけ体温が上昇しているのが自分でもわかる。


「別に、なんでもないよ」


慌てて答えると逆に怪しまれてしまい、有紗の目が疑いの色に染まる。


「本当になんでもないってば」


私はそう言うと有紗から視線をそらした。


本当はなんでもないなんてこと、なかった。


五十嵐浩介をひと目見た1年生のころから、私はずっと五十嵐浩介のことが好きだった。


遠くからみているだけでいいと思っていたけれど、実際は近づけるような相手ではなかったからだ。


3年生になってから運良く同じクラスになれたけれど、ジッと見つめていることすら難しい。
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