極上男子短編集
☆☆☆

「全く、あんたはいつになったら高校生らしくなるのかしらね」


翌日、朝食を囲みながら母親にそんなことを言われて、私は思わずお味噌汁を吹き出してしまいそうになった。


「急になに?」


「せっかく希望校に入学できたのに、中学時代からちっとも変わらないんだから」


そう言われても、つい先月まで中学生だったのだから急に変わることなんてできない。


「勉强はちゃんとやってるのか?」


母親の言葉に心配になったのか、新聞紙から顔を上げて父親までそんなことを聞いてきた。


「してるよ。っていうか、まだそんなにちゃんと始まってないし」


授業がしっかり始まるのは今日からだ。


昨日までは委員会決めとか、クラスになれることが先決されていた。


もちろん授業もあったけれど、ほとんどが先生と生徒の自己紹介だった。


「そうか」


父親は納得したように頷いて、再び新聞に視線を落とした。


「高校生になったんだからもう少し家の手伝いもしなさい」


「わかってるよ」


私は思わず仏頂面になって乱暴に返事をしたのだった。
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