恋に落ちたら
「いらっしゃいませ」

ウェイターが窓際の席へと案内してくれた。
お店はステンドグラスのような照明が白い塗り壁に反射し幻想的な雰囲気だった。
所々に置かれたグリーンに加えテーブルに置かれた小さな花がおしゃれなお店で緊張した私の心を和ませてくれる。

メニューを受け取るがどれも美味しそうに見えて悩んでしまっていると、

「いらっしゃい」

その声に顔を上げると友坂シェフがコック帽をかぶったまま立っていた。

「今日はありがとな」

「いや、悟の初めての頼みだから」

笑い合う2人の様子に仲の良さがわかる。
けれど、悟くんは「それじゃあ」といい友坂シェフを戻らせようとする。

「おい。席を用意したのに冷たいなぁ。早く紹介しろよ」

「日下部みのりです」

私が自分から名乗ると友坂シェフは握手を求めてきた。その握手に応えようとするが悟くんはシェフの手をはたき落としてしまった。

「悟、お前ってどれだけみのりちゃんのことが好きなんだよ」

「え？」

「早く仕事に戻れよ、友坂シェフ」

悟くんはぶっきらぼうにいい、それをシェフは苦笑いしながら「ごゆっくり」と言い戻っていった。
悟くんはどことなく顔が赤い気がした。
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