恋に落ちたら
悟くんはちょっと怒っているように見えるが本心ではないように感じる。けれど「俺以外とは来るなよ」と念を押された。

私がトイレに立っている間にお会計を済ませてしまったらしく、スマートな対応に彼が大人であることを感じた。

「悟くん、割り勘にしよう」

「初デートで払わせる男なんていないよ。そんなこと気にしなくていいから」

「でも……」

私は付き合ったことがないのでこれが普通なのかわからない。
でもそういう限り今日はご馳走になろう。
私は改めて悟くんに向き合い、頭を下げお礼を伝えた。

「どういたしまして」

悟くんは下げた頭に手を乗せポンポンとすると、まだもう少しだけ時間があるか? と尋ねてきた。私がうなずくと手を引き、歩き始めた。
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