恋に落ちたら
悟くんの手は相変わらず温かい。
私は繋がれた手をつい見つめて、手を引かれるように歩きだした。

電車に乗る時も手が離れることはない。
けれど何も話すことができない。
悟くんも何も言わない。
電車のドアのところで周りから守られるように立ってくれる悟くんの自然な姿にまた胸の奥が締め付けられる。
他の人にもしているの?
私との経験値の差なのだろうか。
色々な考えが頭の中を巡り、悪い方へと考えてしまう。足元を見つめていると悟くんの顎が頭の上に乗ってきた。そして小さな小さな声が聞こえてくる。

「好きだよ」

え?
思わず顔を上げると悟くんは笑っていた。
私が顔が火照ってくるのを感じていたが、電車の中だったことに気がつき、慌ててまた視線を足下に落とした。
周りに人がいないとはいえ、急に言われた言葉に胸が高鳴っていた。
悟くんは手を繋ぎ直し、絡めるように握ってきた。

どうしてこんなことするの?
胸の高鳴りとは反対に戸惑いを覚えた。
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