恋に落ちたら
「何を食べに行こうか? 食べたいものはある?」

「なんでもいいです。でも肉だと嬉しいです」

うふふ。その言い方がやっぱり可愛らしい。

「よし! じゃあ焼肉か焼き鳥かな。どっちにする?」

「焼肉でもいいですか?」

「もちろん! よく行くお店があるの。そこでいいかな?」

家族とよく行く美味しい焼肉のお店がちかくにあったと思い出した。最近は少しご無沙汰だが、両親のお気に入りのお店の一つで年に数回は行っていた。味は間違いないと思うのであの日のお礼に是非そのお店へ案内したいと思った。

彼を引き連れて歩くこと10分。
歩いている間も彼は気さくで話しやすくて、会話が途切れることがなかった。

焼肉屋の前に着いた時、店構えに驚かれてしまった。

「俺、こんなすごい店で食べたことないです。チェーン店じゃないんですか?」

「え? でもここのお店美味しいんだけど嫌かな?」

「いえ、そういうことではなくて……あの、ここ高いですよね?」

あぁ。そうかもしれない。
我が家で焼肉といえばよくここのお店を使うのであまり気にしたことはなかったが、一般的ではなかったかもしれない。

「ここのお店、前に来たことがあって美味しかったの。駅から近いし、何よりこの前のお礼なので気にしないで」

「でも……」

思案顔の彼の背中を押し、私たちはは店の中へはいった。
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