恋に落ちたら

失敗

翌朝。
約束の5分前、門の前に白いセダンが停まったがチャイムは鳴らさない。
私が出てくるのを待つつもりだろう。
到着したことに気がついた母に急かされ、私はバッグを持つと外に押し出された。

「悟くん、お待たせしてごめんなさいね。気をつけていってらっしゃい」

「おばさん、みのりちゃんをお預かりします。行ってきます」

私のことは知らんぷりでふたりで会話をしていて、その間にさりげなく助手席のドアが開き私は乗せられてしまう。
悟くんは運転席に回り込むとシートベルトをし、車を発進させた。

「私昨日も話したけど悟くんと結婚する気はないんです。だから私から両親にもきちんと伝えますから田神のおじさまたちにも伝えてください。なんなら私から謝りに伺いますから」

昨日両親に言ったことを撤回して欲しくて車が動き出すなり悟くんにそう伝えた。

「俺も昨日言ったけどみのりと結婚するって決めたから」

「だから、私は恋愛結婚がしたいんですってば。お互いを思いやれる人と巡り合いたいんです」

どう言ったら彼は分かってくれるのだろうか。
興味が湧いたからと言う理由で結婚するのは間違っているのに。
私は話が噛み合わないことにイライラして来た。

「もう降ります。止めてください」

「ダメだよ。これからデートなんだから」

「しません。するつもりもありません。いくら話しても堂々巡りですよね」

「みのりは恋愛結婚したいんだろう? 相手がいないのなら俺とすればいいじゃないか」

悟くんと?
あまり覚えていないとは言っても朧げにお兄ちゃんという記憶はあるからそんな人と恋愛なんて考えられない。

「無理です」

「どうして?」

「お兄ちゃんとしてインプットされているからです。そんな人とは恋愛できません」

「やってもみないうちから決めつけるのは良くないぞ。試しにやってみたらいいじゃないか?」

そう言ったと同時に赤信号で止まったタイミングでいきなり助手席に座る私に顔を寄せてきた。驚く間も無く唇をかすめていった。

「き、き、昨日もしましたよね? どうして許可もなくこんなことするんですか?」

2日連続して奪われてしまった唇に手を触れながら呆気に取られてしまった。

「お兄ちゃんとならキスは出来ないだろう? 俺は妹だと思っていたのは卒業したってことかな」

青信号に変わるとアクセルを踏み走り始めた。
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