恋に落ちたら
店員に案内され着席するとメニューを広げるが、ますます彼は困った顔になってしまう。
「ねぇ、本当にこの前助けてくれたお礼なの。お察しの通り色々あったので気分転換に美味しいものを食べたいの。付き合ってくれたら嬉しいんだけど、どうかな?」
「本当にいいんですか?」
「いいから連れてきたのよ。さ、どんどん頼もうよ」
私がどんどん注文をすると彼は驚いた顔で黙ったままだったが、やっと私の話をのみこんだのか頷いた。
「わかりました。じゃ、ありがたくご馳走になります!」
「そうこなくっちゃ!」
テーブルに並ぶ皿数は多いが、大学生の彼のお腹に驚くほど吸い込まれていった。
「すごい食欲! 見てて気持ちいいね。そういえば名前……聞いてもいい? 私は日下部みのり」
「北條 拓人20歳です」
「拓人くんね。この前名前も聞かなかったなぁと思ってたの」
「俺もです。待ち合わせまでしたのに名前も知らないなんて、と思ってました」
私たちは顔を見合わせ笑ってしまった。
「陸上続けるの?」
「好きなんですよね。みんなからの期待が重いと言っても自分自身、陸上が好きだから辞められないっていうやつですかね」
「そっか。好きだから辞められない、か……」
「人からなんと言われようが好きなものは好き。人に言われたから辞めるっていうのは本当に好きじゃなかったのかなって思うんです。貫き通せるほどの強い気持ちがあって本当の好きになるんじゃないですか? ちょっと上手くいえないけど、みんなの期待が重くても、期待に応えられなくても、それを理由に辞めたくはないってこの前思ったんです」
彼の言葉が胸の奥に響いてきた。
「ねぇ、本当にこの前助けてくれたお礼なの。お察しの通り色々あったので気分転換に美味しいものを食べたいの。付き合ってくれたら嬉しいんだけど、どうかな?」
「本当にいいんですか?」
「いいから連れてきたのよ。さ、どんどん頼もうよ」
私がどんどん注文をすると彼は驚いた顔で黙ったままだったが、やっと私の話をのみこんだのか頷いた。
「わかりました。じゃ、ありがたくご馳走になります!」
「そうこなくっちゃ!」
テーブルに並ぶ皿数は多いが、大学生の彼のお腹に驚くほど吸い込まれていった。
「すごい食欲! 見てて気持ちいいね。そういえば名前……聞いてもいい? 私は日下部みのり」
「北條 拓人20歳です」
「拓人くんね。この前名前も聞かなかったなぁと思ってたの」
「俺もです。待ち合わせまでしたのに名前も知らないなんて、と思ってました」
私たちは顔を見合わせ笑ってしまった。
「陸上続けるの?」
「好きなんですよね。みんなからの期待が重いと言っても自分自身、陸上が好きだから辞められないっていうやつですかね」
「そっか。好きだから辞められない、か……」
「人からなんと言われようが好きなものは好き。人に言われたから辞めるっていうのは本当に好きじゃなかったのかなって思うんです。貫き通せるほどの強い気持ちがあって本当の好きになるんじゃないですか? ちょっと上手くいえないけど、みんなの期待が重くても、期待に応えられなくても、それを理由に辞めたくはないってこの前思ったんです」
彼の言葉が胸の奥に響いてきた。