恋に落ちたら
「みのり!」

私を呼ぶ声が聞こえてきた。
振り返ると人混みの流れとは逆らうように悟くんが走ってくるところだった。
その姿を見た瞬間、目から涙がこぼれ落ちた。

「悟くん……」

「みのり! どうしたんだ?」

震える声を絞り出すように私はやっと声を出した。

「会いたかった……」

あまりの小さな声で聞こえなかったのかと思った瞬間、悟くんに抱きしめられていた。

「俺も会いたかった」

耳元で囁かれるその言葉に足の力が抜けそうになり、ふらついた私を更に抱きしめる力が強くなった。
彼の胸元に引き寄せられた私の耳に彼の心臓の音が聞こえてくる。とても速くて力強い音で私に安心感を与えてくれた。

「みのり、ここ目立ってるかも。移動していい?」

恥ずかしそうなその声に私も頷いた。

「このまま顔を隠してて。俺のマンションに移動していい?」

私も周りの目が気になり始め、恥ずかしくなってきた。悟くんに正面から抱きしめられていたのを少しずらし、小脇に抱き抱えるようにして私の顔が見えないようにしてくれた。
悟くんの逞しい腕に抱きしめられているだけでどうしようもないほどに胸が締め付けられる。
この腕の中にずっといたい。
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