恋に落ちたら
車は高速に乗り、どこに連れて行かれるのかと思っていたら海岸線を走り始めた。
車から流れる音楽は少し前に流行ったポップスで、さっき唇を奪われたばかりなのに何故かリラックスしてしまい、私は窓から海を眺めながら口ずさんでしまった。

「随分陽気だな」

あ……

「そんなことないです!」

思い出したかのように顔をしかめる私を見て笑い始める悟くん。
その顔は小さかった頃の悟くんの笑った顔を思い出した。
いつも私に優しく、遊びに付き合ってくれていた頃の顔だった。
今はあの頃と変わってふっくらしていた顔も体も引き締まっており、背も多分180近くあるのではないか。目元は一重でスッと通っており、綺麗な顔立ちをしている。
唯一、サラサラの髪の毛だけは昔のままに思える。

悟くんの笑った横顔につい見入ってしまった。
すると彼は視線に気がついたのか運転しながら私を茶化すように話しかけてきた。

「そんなに俺の顔がいい?」

「ば、バカなこと言わないで。ただ、笑った顔は昔と同じだなって思っただけです!」

「みのりは綺麗になったよ」

ふざけたような声ではなく、急に笑いをやめてそんなことを言われるとドキッとした。
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