恋に落ちたら
「お風呂ありがとうございました」

「みのり、何か飲むか? それとももう寝るか?」

壁にかけられた時間を見るともう少しで23時になろうとしていた。

「お水いただきます。悟くんは明日日勤?」

「あぁ、明日は7時半過ぎには出る。みのりも仕事だろう?同じくらいに出ればいいか?」

「はい」

渡された水を飲むと寝室へ案内された。

「ごめん、急いでシーツは新しくしたから汚くないはず」

「大丈夫」

「抱きしめて眠るのだけは許して欲しい」

そう言うと一緒のベッドに入り、背中から私のお腹の辺りをぎゅっと抱きしめてきた。
首元に彼の顔が近づき頭にキスをされる。
私も彼に抱きつきたくて寝返ろうとするが、悟くんは反対向きにさせてくれない。

「みのり、向かい合ったらまたキスしたくなる。我慢ができなくなるから今日はこのまま寝よう」

悟くんは我慢してると言っていた。
私を求めているってことなんだよね?
私だって悟くんに抱きつきたい。
お互いの気持ちが分かり合えているのに我慢しなければならない理由はないはず。
私は悟くんの腕から抜け出るように回り、悟くんの方に向き合った。
そして悟くんの胸に顔を押し当て、彼の心臓の音を聞いた。
ドクン、ドクン、と力強く打つ速い鼓動に胸が熱くなってる。
顔を擦り寄せると頭の上から困ったような声が聞こえてきた。

「み、みのり? 俺はみのりを大切にしたいんだ。だから……」

「うん。大切にしてください。優しくしてください」

その言葉を聞き、ゴクンと唾を飲む音が聞こえてきた。

「分かっているのか?」

恥ずかしさで彼の目は見れず、それでも胸元で頷いた。
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