恋に落ちたら
なんとか気持ちを整え、電車を降りると足早に仕事へ向かった。
ロッカーに置いてあった白のブラウスを使う日が来るとは思っても見なかった。
就職した時に先輩から、アクシデントで汚したり、急な客先への対応用に白のブラウスを一枚用意しておくといいと言われていた。
これまで使ったことはなかったが、初めて使うのがお泊りだったなんてと苦笑いしてしまう。

仕事を1日無事に終えて、家に帰るとリビングから賑やかな声が聞こえてきた。
平日なのにお客様なんて珍しいな、と思いながらも娘として挨拶せずに部屋へ戻ることはできずリビングに顔を出した。

「おかえりなさい」

4人の満面の笑顔が私に向いた。

「田神のおじさま、おばさま?」

「みのりちゃん、おかえりなさい」

「はい、ただいま」

あまりの満面の笑みを浮かべる4人の顔になんとなく察した。
父から座るように促され、オットマンに腰をかけると4人は前のめりになりながら口々に良かった、と言い始めた。

「みのり、昨日悟くんの正式なプロポーズを受けたんだってな」

「え? なんでそれを?」

「昨日悟くんから連絡がきたんだ。プロポーズした話と、もう夜遅いから泊まらせます、とな」

だから両親から外泊したのに連絡が来ていなかったのか。
根回しのいい悟くんには恥ずかしいやらありがたいやらと困っていると玄関のチャイムが鳴った。

「はいはーい」

ご機嫌な母が玄関まで迎えに行った。
この流れからするときっと……。

「こんばんは」

やっぱり……。

「おぉ、来たね」

「お邪魔します。昨日は連絡が夜分遅くになってしまいすみませんでした」

悟くんが両親に頭を下げると、すかさず父が声をかけた。

「何言ってるんだ。嬉しい知らせだったよ。2人が結婚すると聞いて私たちはどれだけ嬉しかったか」

「そうだぞ。みのりちゃんが悟のお嫁さんになってくれるなんて夢のようだな」

両家の両親は喜んでくれており恥ずかしいような嬉しいような気持ち。
反応に困っている私の椅子の後ろに回ってきて肩に手を乗せてきた。
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