先輩とキス(短編)
――卒業式。
卒業する川瀬先輩より
私の方が泣いていた。
『先輩〜っ』
泣きっぱなしの私を見て、川瀬先輩は
困ったように笑うと
隣にいた友達に
「シャッター押して。」とカメラを渡して
私の肩を抱き寄せて
ピースした。
泣き顔の私も
最後の制服姿の先輩に
しっかり引っ付いてピースした。
式も終わり、
人がどんどん帰っていく
静かな体育館の裏で川瀬先輩と2人。
「まーだ泣いてんのか?」
先輩は私の頭を優しくなでる。
『だって…先輩がいないと寂しくて……』
先輩は呆れたように笑う。
「付き合ってるんだから寂しくないだろ?」
先輩は私のあごを優しく持って顔をあげさせた。
『先輩……大学行って浮気しないでくださいね。』
「ばーか。浮気なんかするわけないだろぉ。」
先輩は私の大好きな笑顔になると、
第二ボタンをくれた。