吸血鬼との世界

二週間の休み

学園祭お疲れさまでしたの休み。

私たちは零夜の別荘で過ごすことにした。
寮にいてもいいのだが、せっかくの休みということで。

零夜のみのホテルでもよかったが、2週間という短さなため、学園近くにあるという犬飼家が所有する別荘の一つに行くことにした。

零夜の別荘は学園から車で30分くらいの距離のとこにあった。
別荘というより、豪邸という方がしっくりくるような建物だった。

「ここが俺たち犬飼家が所有する別荘・・邸の一つだ。ここは主に学園に通ってる俺がよく使っていることが多い邸だ。
父さんや母さんはあの犬飼グループのビルの近くの邸を使うことが多いから、ここにはほとんど来ないから管理は俺に任されている。といってもメイドや執事を入れたくないから今はほとんど物などを置いていない。生活に最低限必要なものしか置いてないんだ。それを優二がたまに清掃とかに来るくらいにしかない」

広い門の入り口に車は止まった。

「じゃあ秋、二週間後にまた連絡する」

「かしこまりました、いってらっしゃいませ零夜様、美鈴様」

「いってきます、秋さん」

秋は一礼して車で去っていった。

「玄関までは遠いからゆっくり周りの景色を見ながら行こう」

「うん」

玄関までは一本道。
道の周りにはアーケードがあり、雨でも濡れずに玄関まで行けるようになっていた。

アーケードの周りにはたくさんの花々や木が植えられていて、とても綺麗に手入れが施されていた。

「綺麗ね」

「これは母さんの趣味なんだ」

「香月さんの？」

「あぁ『人は植物を見ることで安らぎ、落ち着ける。来ていただいた方々に少しでも安らげるような場所を、それが来ていただいた方々へのせめてものお礼よ』って。毎月母さん自身が来て手入れや管理を行ってるんだ」

「この広いとこ全部を！！？？」

「あぁ、ここの植物管理をすることで、衣装デザインのアイディアをもらってるんだと。衣装デザインで悩んだ時はよくここにきて一日中花の管理や草むしりをしてるよ」

「すごい・・」

香月のデザインはどれも美しく、優雅で、華やかなデザインが多い。
それが香月の人気の理由でもある。

名前が【花月】なだけある。
花のように繊細で美しいデザインが多いのだ。
だからか、花月のデザインした服はモデル、女優にも人気があり、雑誌でも特集が組まれるくらい人気だ。
ドラマや番組でも着用され、今では大人気のデザイナーにまでなった。

「着いたぞ、ここが玄関だ」

そこには大きな漆黒の扉があった。
真ん中にはライオンのデザインの手持ちがあり、これがインターフォンらしい。
中まで音が聞こえるのかどうかという疑問が浮かんだが、あえて聞かないことにした。

扉が開き、中から執事長の優二が出てきた。

「お待ちしておりました、零夜様、美鈴様、中の準備は整っております。必要なものなどはすべて揃えてありますが、何か不備などがありましたらいつでもお呼びくださいませ、それでは私はこれにて失礼させていただきます」

一礼して優二は玄関から外に出て行った。

「優二さん、ここにはいないの？」

「あぁ、せっかくだから２週間休暇を取らせた。あいつにも対がいるしな」

「そっか！」

「優二の準備はいつも完璧だから不備で呼ぶことはないから安心しろ」

美鈴の思いを読み取ったかのように答えた。

「うん、ありがと」

二人は玄関の扉を閉めて中に入った。