独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
二十六歳の瑠衣の三歳上と大した年齢差はないのに、堂々とした佇まいに大人の余裕と責任ある地位の者特有の風格が滲み出ていた。

若くして神谷ホテルの経営企画部長を務めるだけはある、客観的に見て非の打ちどころのない男性。

そんな彼に低めの美声で話しかけられたとき、瑠衣は久々に胸が高鳴るのを感じたのだ。

もう何年も恋をしていなかった自分が、まさか一目惚れをするなんて。信じがたかったけれど、このときめきは本物だ。


緊張もありお見合いの最中はどんな話をしたのかはよく覚えていない。

けれど神谷家サイドから是非縁談を進めたいと返事が来たので、大きな失敗はしなかったのだろう。

もちろん前村家も快諾して、その後は数回のデートを経て結婚に突き進んだ。

婚約期間は晴臣の仕事が忙しくて会う機会があまり持てなかった。

そのため、お互いを理解するには時間が足りなくて多少の不安を感じていた。

でも大丈夫。

結婚して一緒に暮らすようになれば、自然と分かり合えるはず。

きっと優しさ溢れる幸せな家庭を築ける。そんな風に前向きに考え自分を納得させた。

当時の瑠衣は結婚がゴールだと、疑うこともなく信じていたから。
< 2 / 108 >

この作品をシェア

pagetop