独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
浮気疑惑
期待外れだった結婚記念日から十日程経った。
夫婦関係に大きな進展はない。
日々の暮らしは何も問題はなく穏やかなものの、重い話をするきっかけがなかなか掴めないからだ。
(早くなんとかしようって焦る気持ちはあるけど)
ここ最近の夫は帰りが遅く、連日深夜十二時少し前に帰宅といったハードワークをこなしている。
かなり疲れている様子なので、今は彼のサポートに専念するつもりでいる。
今夜も晴臣の帰宅は十一時三十分だったので、瑠衣は軽い夜食を用意した。
「ありがとう」
夫は瑠衣に対して気遣うように微笑んだけれど、その表情はどこか暗い。
(やっぱり相当参ってるんだわ。晴臣さんは今どんな案件を担当していたっけ)
彼は三十歳の若さで経営企画部長を務めているので、幅広い仕事をこなしている。
それでもその時々でメインとなる案件があり、仕事好きの晴臣はプロジェクトに没頭すると、無理をしがちだ。
体力がある為、病気になったりはしないようだが、それでも心配ではある。
瑠衣は夜食で使った食器などのあと片付けを済ませてから、リビングで食後のお茶を飲んでいる晴臣の元に向かった。
きっとタブレットでも見て仕事について考えているだろうから、早く寝るように言おうと思ったのだ。
けれど、予想外に晴臣はソファーに横たわっていた。
「晴臣さん?」