独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
後は怪しい外出の日に後を付ける。自分では無理と思ったら探偵を雇う。

どちらも現実的ではない気がする。

(すぐに晴臣さんにばれそう)

上手く行くとは思えない。

(私たち夫婦には合ってない方法だわ)

やはり直接聞くしかないのだろうか。

考え込んでいると、バスルームの方から物音がした。
晴臣のシャワーが終わったのだろう。

瑠衣は慌てて椅子から立ち上がり、カレーを温め始めた。



「今日は俺が淹れるよ」

食後のコーヒーの準備をしていると、晴臣が近づいて来た。

「ありがとう。今日買ったこの新しい豆を使おうと思ってたの」

「分かった」

しばらくすると引き立てのコーヒーの良い香りが部屋に漂う。

晴臣が淹れるコーヒーが大好きだ。不思議なことに特別美味しく感じるから。

「どうぞ」

「ありがとう」

リビングのソファに並んで寛ぐ、まったりとしたこの時間がとても愛おしい。落ち着くし幸せを感じる。

平和で夫が浮気をしているなんて、自分の思い込みじゃないのかという気がしてくる。

「今日は大忙しだったんだ。父がまた腰をやったって言い出して。そろそろ引退を進めた方がよさそうだ」

「お義父さまが引退したら晴臣さんが社長に?」
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