独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「実家に帰るってどういう意味だ?」
(まさか離婚を考えているんじゃないよな?)
不安に揺れる心を隠して、瑠衣に問いかける。
「少し考える時間が欲しくて」
「考えるって何をだ」
焦りからかつい声が大きくなる。しかしそんなことに構ってはいられない。
(なんと言われても離婚はしない)
心配はさせたけれど、浮気は誓ってしていないし、今後もする予定はないのだから。
「私、昨夜は感情的になってしまったでしょ? ああいうのは良くないと思って。晴臣さんにも迷惑をかけちゃいそうだし、一度実家で気持ちを落ち着かせたいと思う」
「迷惑だなんて思っていない」
だから実家になんて帰るな。
距離を置いたって、問題は解決しないじゃないか。
そう説得したものの、瑠衣は納得がいかない様子だった。
撤回すると確約するまで話したかったが、あいにく家を出る時間が近づいている。
今日は朝から予定がぎっしり入っている為、これ以上話し合うのは無理だった。
「瑠衣が実家に帰る必要なんてない。昨夜のことなら俺は全く気にしていないんだから。とにかく帰ったらしっかり話し合おう」
そう言い残し家を出たが、日中は瑠衣の動向が気がかりだった。