独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「ところで今日は何時頃まで大丈夫なの?」

「遅くまで平気。この後は実家に帰る予定だから」

「そうなんだ。だったらもう一軒いかない? 気になってるバーがあるんだけど」

「いいよ」

今いる洋風居酒屋では食事をメインにして、早々に那々の目当てのバーに移動することにした。

地下鉄で三駅程移動と少し距離があったが、シックな店構えのバーは瑠衣の好みにも合っていた。

「ここ瑠衣は初めてでしょ?」

「うん。でも晴臣さんは来たことがあるかもしれない。この近くにオフィスがあるの」

彼はひとりで考え事をしたい時に立ち寄る店があると言っていた。
落ち着いた雰囲気で、誰にも邪魔されなくて居心地が良いそうだ。

(このバーってことはあるのかな。何ていうお店だったかな)

店名を聞いた記憶はあるが、思い出せない。

「そうなんだ。旦那さんが来たらどうする?」

「今日は来ないよ。さっき電話したとき家にいるって言ってたもの」

ウォールナットの扉を開きバーに入る。

店内の様子を見回してみたが、照明が落とされている為、席についている人の顔までははっきり見えない。
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