独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
(そう言えば、まだ帰りの連絡が来ていなかったな……)
いつもはこのくらいの時間にメッセージが届くが、どうやら今日は遅れているようだ。
結婚記念日だと言うことは、朝話題に出しているので忘れられているなんてことはないはずだけど。
(仕事が忙しいのかもしれない)
時刻を気にしながら片付けをしていると、七時過ぎにようやく着信が入った。
すぐにスマートフォンを手にして画面をタップする。
「はい」
『俺だけど、トラブルで遅くなりそうだ』
「……え?」
晴臣の声はいつも通り淡々としており、気まずさや申し訳なさは少しも感じなかった。
(この普通な感じは、もしかして記念日のこと忘れてる? いや、でも朝話したし……)
『連絡が遅くなって悪かった』
「だ、大丈夫。仕事なんだから仕方ないもの」
『ありがとう。何時になるか分からないから先に寝ててな。それじゃあ」
「え? あのっ」
彼は急いでいるのか用件を告げて直ぐに通話を切ってしまった。