独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「え? まだ早いのに、もう少しいいんじゃない?」
引き留めようとする瀬尾に、那々はいかにも残念そうに肩を落とす。
「そうしたいんだけど明日の仕事が現場でハードだから早めに休まないと」
「へえ、大変だな」
「そうそう。力仕事頑張ります」
那々は瑠衣を促すように肩にポンと手を置く。瑠衣が立ち上がると、瀬尾が慌てたような声を上げた。
「え? 瑠衣はいいだろ?」
「ごめんなさい。瑠衣も同じ仕事なの。同僚だって言ったでしょ?」
那々はぴしゃりと言い瀬尾を突き放した。
店を出ると那々は疲れを取るようにぐっと腕を伸ばした。
「ああ、窮屈だった」
「那々……もしかして何か気付いてた?」
彼女の先ほどからの態度で、そう感じた。
「気付いてたって程じゃないけど、瑠衣はあの人が嫌なんだろうなってのは分かった。だとしたら私も関わらない方がいいでしょ?」
瑠衣は理由もなく人を嫌いになったりしないしと那々は笑う。
「ありがとう。ちょっと嫌な別れ方をしたから関わりたくなくて」
「そうなんだ。まあ遊んでそうな人だよね」
「よく分かるね」
瀬尾は一見、誠実そうに振舞っていたと言うのに。