独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
不要なトラブルに発展する前に、はっきり言っておかなくては。

「はい」

瑠衣が電話に出ると瀬尾は楽しそうな声を上げた。

『おーやっと出たな』

「どうして私の連絡先を?」

『知り合いに聞いた。誰かは言うつもりはないから聞くなよ』

釘を刺さなくても聞くつもりはない。共通の知人なんて限られているからだいたいの予想はつく。

「どのようなご用件でしょうか」

『なんだよ。久しぶりに再会したのに素っ気ないな』

結局大した用はないのだろう。瑠衣は溜息を吐いた。瀬尾が何を考えているのか理解できない。

(私を揶揄いたいのか、困らせたいのか。相変わらず嫌な性格してる)

「あの、用がないなら切ります。それから今後このような電話は控えて下さい」

『なんで連絡したら駄目なんだよ』

「ご存知でしょうが私結婚してますから。夫との時間にやたらと電話が来たら困るんです」

『大丈夫だろ? 晴臣は気にしないって言ってたし』

「え?」

どういうことだろう。瑠衣は眉を顰める。

『晴臣が連絡しても気にしないって言ったからさ』

「そんな話をするとは思えないけど」

驚きを隠しつつ答える。

(どうせ彼が嘘を言ってるに決まってる)

惑わさされないようにそう言い聞かせてるが、とても嫌な気分だ。

『瑠衣が思ってるより、俺と晴臣って仲がいいんだぜ』

(本当に?)

晴臣は瀬尾を友人だと思っているのだろうか。彼は大勢の部下がいるし、人を見る目はありそうなのに。それとも友人としては瀬尾は問題ない相手なのだろうか。
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