独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「瑠衣」
掠れた夫の声がした。彼も目が覚めたようだ。
瑠衣は彼を見上げて微笑んだ。
「おはよう、晴臣さん」
「ああ、今何時だ?……五時か」
時計を見た彼ががっかりした声を上げる。
「まだ間に合うでしょ?」
休みの瑠衣と違い晴臣は通常出社だ。住まいのマンションから会社までは三十分程度で着くので、七時に起きれば問題ないはずだけれど。
「あと少しで瑠衣と離れないといけない」
晴臣は憂鬱そうに愚痴を零すと、瑠衣をぎゅっと抱きしめた。温かくて逞しい胸の中にいると、愛しさが溢れて来る。
「私も離れたくないけど、仕事は頑張らないとね」
「そうだな。やる気を出さないとな」
「うん、その意気」
瑠衣はくすりと笑った。晴臣は仕事に誇りを持って取り組んでいる。グチグチいいながらも時間が来たらベッドから飛び起きて行くのは知ってるのだ。
「瑠衣は無理しない方がいいぞ? 昨夜疲れさせたからな」
夫がやけに色っぽい眼差し向けて来る。瑠衣は見惚れながら答える。
「平気。私は今日は休みだから。昨日休日出勤した代休なの」
「そうか。だったら大丈夫だな」
「え?」
何がと問う前に、晴臣に組み敷かれていた。と思えば朝だと言うのに濃厚なキスをしかけられる。
爽やかな朝の光りが差し込む寝室に、ふたりの吐息が満ちていく。
散々乱されてぼんやりした瑠衣に、晴臣が不敵に告げる。
「あと一時間、瑠衣を抱いてたい」
「え……うそ、本当に?」
「いくら抱いても足りない。愛しいってこういうことを言うんだな」
彼の想いが現れているように強い抱擁をされる。
(晴臣さんって……こんなに情熱的だったの?)
遠慮がなくなった夫の愛の重さを、瑠衣は嫌という程味わったのだった。