透き通った君に僕の初恋を捧げる
プロローグ 青春は突然に
宮澤尊(みやざわ みこと)、十七歳。
地方の小さな寺の息子、一人っ子なので一応跡取り。
地元の可もなく不可もない高校に通わせてもらっている。
今春から三年生。勉強はそこそこ出来るという自負はあるが運動はからっきしダメ。
おしゃべりが得意なわけでもなければ、顔がいいわけでもない自分はどうがんばっても隠キャ。
陽のあたる人間にはなれない。
一応入学当初から部活も参加しているが、その部活も「オカルト部」。
御察しの通り地味だ。
霊感がありそうというだけで勧誘された。俺に霊感はない。
一緒に俺の実家の寺の蔵を漁って見たり、心霊スポットを回ったりをしてみた事もあるが結局二年間なんの成果も得られなかった。
長期休みには心霊体験などのレポートを書いてオカルト雑誌に投稿してみたりもしたが佳作にも選ばれない。
そんなわけで映えた三年間を送ってこなかったので、今日の入学式に目を輝かせ、まだ新しい制服を着ている新入生を見ているととても眩しく見える。
全員後光が差しているかのようだ。
本来であるならば、今日登校するのは一年生と入学式の案内を務める生徒会、それから入学式で校歌を披露する合唱部と吹奏楽部だけだが、何故かオカルト部も召集がかけられた。
「(何もこんな日に集まらなくたっていいだろ…。)」
そう思いながら重い足取りで通学路を歩く。
何も素直に部活に行かなくたって良かったかもしれない、どうせそんな重要な事をするわけでもないし。伝達事項があるならば携帯に連絡が来るだろう。今からでも引き返してしまおうか。