透き通った君に僕の初恋を捧げる
「好きです!!」
俺の声が響いた。
周りの生徒が一斉にこちらに視線を向ける。
もっとも、誰だって公衆の面前で告白を始めたら見てしまうだろう。
それが人間というものだ。
彼女と俺の顔がみるみるうちに赤くなっていった。
1秒前の自分をぶん殴ってやりたい、俺はなんてひどい男なんだ。
彼女の目が泳ぐ、もう今はお互いのために断ってくれ。
彼女が口を開く。
「ごめんなさい!」
俺の願いが届いたのか彼女は震える声で俺に謝罪をした。
その声は鈴の音のように愛らしかった、近くで見る彼女は目も大きく、鼻と口のバランスもいい。
どう頑張っても美少女としか言いようがない。
特に肌は白く透き通るような。透き通る?ちょっと待ってくれよ、
「(本当に透き通ってないか?)」
彼女をよく見つめると、彼女の体の向こうに校舎や歩いている生徒が見える。
見間違いかと思って目を擦ったり、頭のてっぺんからつま先まで何度も見回して見るがやっぱり透けている。
透けているどころか彼女の存在すら段々と見えなくなってくる。
「(もしかして、幽霊!?)」
思わず握っていた手を振り払い、後ろに飛び下がった。
寺の息子だからって幽霊なんか信じていない、霊感だってからっきしのはずだ。
だったら今。目の前にいる彼女はいったい何なんだ!
言葉も出ずに固まっていると、彼女は悲しそうな顔をしてついに完全に消えてしまった。
どこかに走り去ったなどとは違う。完全に消えて見えなくなった。
残ったのは彼女の腕を掴んだ時の冷たい感触のみ。
「何なんだよ…。」
一気に緊張が抜けてその場にしゃがみこんだ、今の俺は周りにどう映っているのだろうか。
彼女は俺以外の人にも見えていたのだろうか、もしかして周りの生徒たちから見れば俺は一人で無に対して告白をしたやばい奴に見えていたのではないのだろうか。
色々想像して胃が痛くなったが、彼女の顔を思い出すと不思議と胃の痛みはすっと消えていった。
「くっそ…。」
頭の中で彼女の顔が鮮明になっていくにつれ、顔が赤くなり心臓か跳ねた。
俺は今日、幽霊に初恋を奪われてしまったらしい。