透き通った君に僕の初恋を捧げる
それからシエナはオカルトには全く興味がない。
それどころかホラーは苦手らしい。
しかし入学当初その見た目からか周りから少し距離を置かれていた。
中身はそのまま日本人だというのに、どう見たって英語しか話せなさそうという理由だ。
そこを樟葉に付け込まれた。
シエナと樟葉はすぐに仲良くなり一緒の部活に入ろうとシエナを誘い気がついたらオカルト部に入れられていたそうだ。
正直これが一番怖い話かもしれない。
「俺のことはもういいからさ、今日集まった理由はなんなんだよ。」
「そうだよ、樟葉ちゃん。入学式に来る必要なかったんじゃないの?」
「僕もそう思う。」
自身の話題から逃げる為に樟葉を見たが、今日ここに集められた理由を知りたいという気持ちはみんな一緒だったらしく一斉に視線が樟葉に集まった。
明らかに全員が不満だという表情をしているのを見て樟葉は少しばかり罰が悪そうに苦笑するものの、わざとらしい咳払いを俺たちに見せつけると椅子に座り両ひじを机に着くと手を組んだ。
「皆は今年の入学生の人数を知ってるかい?」
樟葉以外の三人が顔を見合わせる。
もちろん知る由もない、「いや…。」とはじめが首を横に振る。
だからなんなんだと訝しむ俺たちを鼻で笑い、くいっと丸メガネをあげる。
「今年の入学人数は81人”だった”んだよ。」
「だった?」
シエナが含みのある言い方に聞き返した。
樟葉は待ってましたとばかりに立ち上がり、俺たちを見下ろす。
「今日入学したのは80人。一人減っている。亡くなったんだよ、入学予定の女子生徒が一人。」
こんなに面白いネタはないだろうと鼻高々に話し出す。
どうやら入学予定だった生徒が入学式の一週間前に事故で亡くなったらしい、事故現場は学校からちょっとだけ離れている商店街の近く。
飛び出してきたトラックとぶつかって即死。
「中学生がとは聞いてたけど、うち入学する子だったんだ…。」
シエナは両親が海外で仕事をしている為、商店街のすぐ裏の学生寮に住んでいる。
学生寮からは事故現場、献花されている場所が見えるという。
俺とはじめの家は商店街とは逆の方に住んでいたのでその事故の存在さえ知らなかった。