透き通った君に僕の初恋を捧げる
「誰もいないと静かだな。」
「式典だからね、本来休みだったはずなのに。誰かさんのせいで。」

 哀れな部員たちの冷めた視線が樟葉に向けられるか本人は御構い無しに、「この後みんなでご飯行かない?」などと携帯でファミレスの新作メニューを検索していた。
 その新作のパフェ美味そうだな。

「まぁ、夏にはオカルト部は廃部だし。集まりたい樟葉ちゃんの気持ちもわかるよ。」

 シエナの追い討ちが樟葉に刺さる。
 このまま一年生が入らなけらば廃部。
 一応部長でありオカルト部の創始者には強いダメージのようだ。
 さすがにここまで部長と部員の心の持ちようが違うと哀れに感じなくもない。

「あ、校歌。」

 落ち込んでいた樟葉がその場に立ち止まる。
 合唱部による校歌斉唱が始まったのだろう、吹奏楽部が奏でる校歌のイントロが聞こえて来た。

「私校歌の歌詞全部覚えてないんだよね。」
「あ、私も覚えてない。」
「俺も。」
「僕も。」

 うちの学校は音楽の授業は選択式で、音楽の授業を取っていない生徒は校歌をしっかりと習う機会がない。
 この四人は誰一人として音楽を選択しなかった為に三年生になる今でも歌詞を完全には覚えきれていない。
 ちなみに校歌を歌わなきゃいけない式典の時には壇上のモニターに歌詞を表示してくれるので困ったことはない。

「青春って感じだね。」
 
 強い風が吹いて髪の長いシエナとはじめが髪を抑える。
 校門の近くに植えられている桜が風に吹かれて沢山の花びらが散った。
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