透き通った君に僕の初恋を捧げる
「…なぁ。…なんか聞こえないか?」
校歌が聞こえなくなった頃、なにか違う音が聞こえて来た。
「何にも聞こえないけど。」
俺の問いかけに三人が周りを見渡す。特別何かわからないような音は聞こえていないらしい。眉をひそめる。
確かに小さく何か聞こえているのに。
耳に手を当てて周りの音に耳をすませた。
「泣いてる。」
「え?」
「こっち、体育館の方か?」
すすり泣く悲しい声が聞こえた。普段なら「どっかで泣いてるな。」と聞き流してしまう気がするが、何故だか今すぐ助けに行かなければならないような衝動にかられる。
気がついた時には走り出していた。
「…くそ!どこだよ。」
走って体育館の方まで来てしまったのはいいが、泣いている声の正体は一向に見つからない。
しかし、泣き声は途切れることなくずっと続いている。
見つける事ができない罪悪感と焦りで思考が段々とまとまらなくなって来た。
「何処なんだよ……。」
一度深呼吸をして気持ちを整える。
胸を撫で下ろしながらもう一度耳をすませた。
「あっちだ……。」
また強い風が吹いた、体育館裏に一本だけ生えている桜の木から花びらが飛んでくる。
泣き声はその方向から聞こえて来た。
「ひっく…うぇ…何で…。っ何でなの…!。」
「どうしたんだ?」