御曹司は恋人を手放さない

付き合い始めてそれほど日は経っていないはずなのだが、結衣は尚に対して胸が高鳴ることはなくなり、恐怖で支配されるようになってしまった。



その日から、尚から向けられる重い愛にビクビクしながら結衣は過ごすことになっていく。日に日に尚の愛は重く、闇を含んでいった。

「結衣、これ受け取ってくれないかな？付き合って一ヶ月記念ってことで」

そう水族館でのデートで言われ、リボンの巻かれたおしゃれな箱を手渡される。結衣がお礼を言って箱を開けると、そこには本物の宝石が使われたハイブランドのネックレスが入っていた。一つ百万円はする大変高価なものである。

「えっ、これってあのブランドの……」

「そう！結衣に似合うと思って」

尚はニコニコと笑うが、付き合って一ヶ月記念のプレゼントにハイブランドのネックレスはあまりにも重いだろう。水族館の照明に照らされ、宝石が煌めいている。

「尚先輩、あたし、こんな高価なものは受け取れません。その、あたしは何もプレゼントを用意していませんし、もし用意したとしてもこんなブランド物は渡せませんし……」