御曹司は恋人を手放さない
そう言って断ろうとすると、それまで笑みを浮かべていた尚の顔が一瞬にして無表情になる。素早く手を掴まれ、二人の距離が近くなり、結衣の体に寒気が走る。

「受け取ってくれないの?俺からのプレゼントはいらないの?俺のことが好きじゃないから?俺はこんなにも結衣のことを考えて選んだのに!」

声がだんだんと大きくなり、尚の瞳がギラついていく。周りにいた人が何事かと視線を向け、結衣は慌てて尚の手を包むように触れる。

「ごめんなさい!突然のプレゼントに驚いただけなんです。ネックレス、とても綺麗でとても嬉しいです。ありがとうございます!」

そう言うと、先ほどの無表情から一転、幸せそうな笑顔を尚は浮かべた。その切り替わりの早さに、結衣はさらに恐怖を感じる。

「よかった、気に入ってくれて」

つけてあげる、そう言われて結衣の背後に尚が回り、ネックレスがつけられる。

「うん、よく似合うよ」

「ありがとうございます……」
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