御曹司は恋人を手放さない
胸元で揺れるネックレスはとても美しく、女性たちが羨望の眼差しで見つめてくる。だが、そのネックレスは結衣には自身の自由を奪う首輪のように見えてしまう。

(このまま、尚先輩とお付き合いをしていていいのかな?)

男子と少し目が合っただけで生徒会長の部屋に連れ込まれて問い詰められ、陸上のユニフォームを着ると男子の視線を集めるから着るなと言われ、プレゼントやデートを断ろうとすると不機嫌になる。

幸いだったのは、尚と学年が違うということだろう。尚は三月になれば卒業し、学校からは離れる。結衣は強く拳を握り締めた。

(尚先輩が卒業したら、そのまま別れよう。尚先輩が在学している間に別れるのは怖い……。何されるかわからないし)

結衣はそう決意し、隣で微笑む尚を見上げた。



月日はどんどん過ぎていく。尚の煮詰めた砂糖のような愛は結衣を苦しめ続けていたが、それも卒業までと考えることで結衣は何とか自分を保っていた。

尚は有名大学を受験し、無事に合格した。受かったよ、と嬉しそうに報告してくれた尚に結衣は「おめでとうございます」と笑いながら言った。
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