御曹司は恋人を手放さない
尚はそう言いながら車を降り、結衣に手を差し伸べる。結衣は恥ずかしさを感じながらその手を取り、屋敷の中へと案内された。

手入れされた庭はとても広く、海外の家のような巨大なプールまでついている。さすがお金持ちだな、と思いながら結衣は尚と共に屋敷の中へと足を踏み入れる。

「おかえりなさいませ」

屋敷の中へ一歩入れば、メイドや執事が一斉に頭を下げ、コートや荷物を預かってもらう。

「す、すごいですね」

素直に驚く結衣の頭を優しく撫でながら、尚は「すぐに慣れるよ」と微笑む。そして階段を登り、ある一室のドアを開ける。

「入って」

「お、お邪魔します……」

尚の部屋なのだと思って結衣は足を踏み入れたのだが、一歩中に入るとそこは尚の部屋ではないのだと一瞬にしてわかる。

部屋は白いレースのカーテンがつけられ、天井にはシャンデリアが煌めいている。そして、天蓋付きのベッドに白く可愛らしいソファやドレッサーなどが置かれていた。どう見ても男の子の部屋ではない。
< 16 / 20 >

この作品をシェア

pagetop