御曹司は恋人を手放さない

「〜〜〜！」

おとぎ話の王子様がするような告白をされ、顔中に熱が生まれていく。今まで恋愛などしたことなどなく、頭から先ほどのことが離れない。

「明日、学校行けるのかな……」

彼とは今まで話したことも、目すら会ったこともなかった。一体どこで好かれたのかはわからないが、王子様とも呼ばれている人間がふざけた罰ゲームなどで告白をすることはないだろう。

その日、結衣は眠ることができなかった。



その翌日から、それまで関わりが全くと言っていいほどなかった尚が結衣の前に現れるようになった。三年生の教室は一年生の教室から離れている。だが、尚はお昼休みになると結衣にわざわざ会いに来た。

「結衣、一緒にお昼食べようよ」

尚がそう言いながら教室に入ってくるたびに、結衣に冷たい視線が突き刺さる。それが嫌で結衣はお昼休みになる前に教室から逃げるようになったのだが、何故か尚は結衣の前に現れ、「一緒に食べよう」と声をかけてくる。