御曹司は恋人を手放さない
腰を抱き寄せられ、優しく抱き締められる。初めて異性に抱き締められた。その温もりに、結衣の心拍数が上がっていくのがわかる。

「好きだ」

一途にそう言い続ける尚に、結衣は次第に心を許していくようになってしまう。お嬢様たちにこれ以上睨まれるのが怖いということもあり、結衣は初めて告白されて一ヶ月後には尚の告白に応え、付き合うようになっていた。



結衣が尚の恋人になると、あれだけ刺々しかった女子生徒たちはどこか諦めたような顔をして結衣をチラリと見て去っていく。

(どうして、こんなにも諦めがいいんだろう……。天王寺先輩が何か言ったのかな?)

そんなことを結衣が考えていると、「結衣」と言われ背後から尚に抱き締められる。

「て、天王寺先輩!」

突然抱き締められたことに結衣は驚き、尚から逃げようともがくも、逃がさないと言わんばかりにさらに強く抱き締められ、揶揄うように耳に息を吹きかけられ、びくりと体が跳ねる。
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