愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
23 苦過ぎる後悔
いつもの塔の屋上で、シャーリィは膝を抱え声を立てずに泣いた。
今は、大声をあげて泣き喚く気分ではなかった。
泣きながら、シャーリィは心のどこかで期待していた。
ウィレスは、シャーリィがここで泣いていると、いつも来てくれたから。
いつものように彼が来て、不器用な言葉で慰めてくれるのを……。さっきの言葉は嘘だと撤回してくれるのを待っていた。
だが、いつまで経ってもウィレスは来ない。
(そうよね。来るわけがないわ。あんなことを言ったのに――お兄様の気持ちを知っていたことまで明かしてしまったのに、今まで通り妹として扱ってくれるはずなんてない。きっともう、今までのようにはいられないんだわ。私とお兄様は……)
言いようのない後悔と絶望が押し寄せてきて、シャーリィは身を縮めるように、膝に顔を伏せた。
(こんなことなら、恋なんてしなければ良かった。全てを失くしてしまうのなら、最初から好きにならなければ良かった。どんなに恋をしたって、所詮、私は片恋姫なのに。恋が実ることはないって、知っていたはずなのに……どうして、恋なんてしてしまったの?)
涙はとめどなく溢れ、スカートの布地を冷たく濡らす。