愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
あの日以来、今度はウィレスがシャーリィのことを、露骨に避けるようになった。
シャーリィの方も、自分からウィレスに近づくことはせず、宮廷内ですれ違っても、ぎこちなく目を逸らして通り過ぎるだけだった。
すっかり笑顔を失くし塞ぎがちになったシャーリィを、皆が心配する。だがその理由は、事情を知らぬ者達には決して打ち明けられぬもの。
誰に相談することもできぬまま、ただシャーリィは、消えることのないウィレスへの想いと必死に戦う毎日だった。
「姫様。気分転換に、馬に乗って外へ出掛けませんか?」
アーベントがそんなことを言い出した時も、シャーリィはあまり気乗りがしなかった。
「馬に乗って?でも、宮殿の外なんて……いいの?」
「王都の外へ出るのは、さすがに難しいでしょうが……王都の外れの丘の上を馬で散策するくらいなら、大丈夫でしょう。あそこは一応、王家の所有地ですし、こんな晴れた日は、すごく見晴らしが良いですよ」
熱心に勧められて……それに、自分のことを心配してこんな提案をしてくれたのに、断るのも気が引けて、シャーリィは結局頷いた。