愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
王家所有地への『散策』とは言え、国の最重要人物である宝玉姫が行くとなれば、それなりの警護が必要となる。
軽い気持ちで頷いたシャーリィだったが、武装し騎馬した親衛隊員達に周りを囲まれ、おまけにせっかく馬に乗ったというのに、走らせることは許されず、ただ馬丁に手綱を引かれて行くだけでは、気分転換どころか何の面白味もない。
途中休憩に立ち寄った泉で、ぼんやり気を滅入らせていると、アーベントがどこか悪戯っぽい笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「せっかく散策に出られても、これではつまらないでしょう?姫様」
「そうね……あぁ、いえ。そんなことはないわよ。これでも、それなりに気分転換になっているわ」
「お気を遣っていただかなくて結構ですよ。そこで姫様、物は相談なのですが……二人で抜け出しませんか?」
こっそり耳に吹き込まれ、シャーリィは目を丸くした。